甲状腺疾患とは
甲状腺とは、喉ぼとけの真下にある、蝶が羽を広げたかのような形をしている臓器で、重さは10~20g程度です。この甲状腺では、血液中に含まれるヨウ素を積極的に取り込み、これを原料とした甲状腺ホルモンが作られ、同ホルモンは甲状腺から血液中へ分泌されるようになります。なお甲状腺ホルモンには、新陳代謝を盛んにさせる、交感神経を刺激する、とくに胎児や小児の成長や発達を促進させるなどの働きをします。
同ホルモンの分泌量というのは常に一定となっているのですが、ただこの分泌量が体内で過剰になったり、それとは逆に量が少なくなったりすることがあります。すると次第に身体に様々な症状が起きるようになります。このような状態にあると、何らかの甲状腺疾患に罹患している可能性が高いです。当院では、甲状腺疾患の診療も行っているので、気になることがあれば、いつでもお気軽にご受診ください。
なお甲状腺疾患の種類としては、甲状腺ホルモンが分泌に過剰(甲状腺機能亢進症:バセドウ病 等)または分泌不足(甲状腺機能低下症:橋本病 等)になる甲状腺機能の異常、甲状腺に炎症が起きるケース、甲状腺に腫瘍が起きるタイプがあります。また主な症状に関してですが、甲状腺ホルモンが過剰な状態と不足している状況では、症状が異なります。以下の症状等に心当たりがあれば、一度ご受診ください。
このような症状はご相談ください
甲状腺ホルモンが過剰な状態にある場合にみられる主な症状
- 甲状腺が腫れている
- 眼球突出
- 動悸、息切れ
- 多汗
- 疲れやすい
- 手指が震えている ・暑がっている
など
甲状腺ホルモンが低下している際によくみられる症状
- 体重が増えている
- 体にむくみがある
- 寒がっている
- 記憶力が低下している
- 便秘 ・脈がゆっくりになる
など
主な甲状腺の病気
バセドウ病とは
甲状腺が過剰に分泌してしまう甲状腺機能亢進症のひとつで、主な疾患として挙げられることが多い病気でもあります。発症の原因につきましては、免疫異常によるものではないかといわれています。この場合、血液中で甲状腺を攻撃してしまう抗体が作られてしまうことで、過剰に甲状腺ホルモンが分泌されるようになります。また遺伝的要因もあるのではないかともいわれますが、現時点では特定できていません。女性の患者数が多いのが特徴で、男女比は男性1に対して、女性は5もしくは6の割合になっています。
よくみられる症状としては、甲状腺が全体的に腫れていきます(びまん性甲状腺腫)。また頻脈や動悸、眼球突出が挙げられます。上記以外にも、異常に汗をかく、食欲は増し、よく食べるものの痩せてしまう、疲れやすい、手が震える、下痢などの症状がみられます。
治療について
過剰に分泌されている甲状腺ホルモンを抑制し、正常化させるためには、まず薬物療法が行われます。この場合、抗甲状腺薬として、プロピルチオウラシルやチアマゾールなどの内服薬が使用されます。同薬による治療は、発症初期(3ヵ月程度)は副作用がでやすいので、2週間に1度の割合で通院と血液検査をしていきます。
その後、患者様の経過をみるなどして、医師が必要と判断すれば、放射性ヨウ素治療(アイソトープ)、甲状腺の一部または全部を摘出する手術療法が行われることもあります。
橋本病とは
主に免疫異常によって甲状腺に炎症が起き、それによって甲状腺の細胞が破壊されるようになれば、甲状腺ホルモンの分泌が低下することがあります。この影響で、様々な症状がみられているが橋本病です。慢性甲状腺炎とも呼ばれます。30~40代の女性が多く、患者数を男女別でみると、女性の方が20倍ほど多いともいわれています。
人によっては、診断されても無症状ということもあります。ただ病気が進行すれば、甲状腺ホルモンの分泌量は低下していくことになります。このような状態になれば、甲状腺の炎症による腫れがみられるほか、同ホルモン分泌不足による代謝の悪化によって、身体にむくみがみられる、体重が増える、寒がっている、便秘になる等の症状もみられ、嗄声(声がかれる)や抑うつ気分なども起きるようになります。
治療について
甲状腺機能が明らかに低下していると判断されると治療が行われます。この場合、薬物療法として、体内で不足している甲状腺ホルモンを内服する薬物療法が行われます。
なお橋本病と診断された患者様でも、甲状腺機能に異常がなければ、治療の必要はありません。ただし、機能が低下するリスクがあるので、経過観察のために通院することもあります。
甲状腺腫瘍とは
甲状腺に発症する腫瘍を総称した呼び名が甲状腺腫瘍です。この場合、良性と悪性の両方ともが含まれます。
なお良性腫瘍には、甲状腺嚢胞、単純性甲状腺腫、腺腫様甲状腺腫、プランマー病等が含まれます。また悪性腫瘍には、甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん 等)、悪性リンパ腫等があります。
同疾患に関しては、腫瘍が小さいのであれば自覚症状も現れにくいです。このような状態で発見されるのは、別の目的で行った画像検査でたまたま甲状腺腫瘍が見つかり、甲状腺腫瘍と診断されたケースが大半です。腫瘍につきましては、良性なのか悪性なのかを診断つける必要があります、そのための検査として、視診や触診をはじめ、超音波検査(甲状腺エコー)、血液検査(CEAとカルシトニン等の腫瘍マーカーを調べる)を行います。さらに詳細な検査が必要であれば、細胞診検査(がんが疑われる部分に針を刺し、細胞を採取し、顕微鏡で調べる)などしていきます。
治療について
良性腫瘍であれば、経過観察となるケースが大半です。ただ腫瘍が大きい、これによって呼吸困難や嚥下障害等の原因になっているという場合は、腫瘍を摘出する手術が適用されます。また悪性腫瘍であれば、手術療法が基本となります。がんの拡大状況によって、切除の範囲が決まります。具体的には、がんのある部分の甲状腺を切除することもあれば、甲状腺を全て摘出することもあります。また手術後は、甲状腺ホルモンの内服、化学療法、放射性ヨード内用療法など、患者様にとって必要とされる追加治療も行っていきます。
内分泌疾患とは
ホルモンとは、体のいろいろな働きを調節する物質のことで、それは内分泌腺と呼ばれる部位で産生されています。この内分泌腺は、ひとつとは限りません。下垂体(脳下垂体)をはじめ、甲状腺、副甲状腺、副腎、膵臓、生殖腺などがあります。これらに異常を起こす病気のことを総称して内分泌疾患と言います。
なお膵臓には、インスリンと呼ばれるホルモンが作られ、血液中に分泌されるわけですが、これが何らかの原因によって不足するなどして血糖値が基準値よりも常に上昇したままとなれば糖尿病と診断されます。そのほかにも内分泌疾患が原因で、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を発症しているケースも少なくありません。
これら内分泌腺に異常(ホルモンの分泌が多すぎる、少なすぎる 等)がみられるなどすることで、様々な症状がみられるようになります。以下、代表的な内分泌疾患を説明していきます。
主な内分泌疾患
下垂体疾患
視床下部の真下に垂れ下がった状態で位置するのが下垂体です。その大きさは小指の先程度とされています。下垂体は脳下垂体前葉と脳下垂体後葉に分かれます。
前者では甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、成長ホルモン、プロラクチン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンが分泌されます。これらのホルモンは、甲状腺、副腎、性腺といったホルモンの分泌調整をコントロールする働きがあります。そのため下垂体ホルモンがうまく分泌されなければ、甲状腺ホルモン、副腎ホルモン、性ホルモンなどの分泌にも影響が及び身体に様々な症状が見受けられるようになります。
一方の後者では、抗利尿ホルモン(パソプレシン:腎臓内で尿量を調節する働きがある)やオキシトシン(子宮を収縮させる働きがある)が分泌されます。上記のホルモン量が何らかの原因で、過剰あるいは不足することで様々な症状が現れていきます。
主な下垂体疾患は次の通りです。
下垂体前葉機能低下症
下垂体前葉から分泌されているホルモンの量が低下している状態です。前葉ホルモンの全てが不足しているのであれば、汎下垂体機能低下症と診断されます。なお下垂体前葉ホルモンの全部ではなく、複数以上のホルモン分泌低下が確認されると部分型下垂体機能低下症、1種類のホルモンのみであれば下垂体ホルモン単独欠損症となります。
発症の原因については、視床下部性と下垂体性に分けられます。前者は外傷、鞍上部腫瘍、肉芽種性病変、先天異常などによって引き起こされます。後者は、下垂体線種やシーハン症候群、リンパ球性下垂体炎などが原因になるとしています。
主な症状ですが、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモンの分泌が低下している場合は、成人女性であれば、無月経や妊娠がしにくくなるなどします。成人男性であれば、性欲は低下し、精巣が委縮するなどしていきます。小児であれば二次性徴が遅くなります。成長ホルモンの分泌が低下すると筋力は低下し、体脂肪は増加します。小児では低身長などの成長障害等がみられるようになります。また甲状腺刺激ホルモンの分泌が低下すると甲状腺機能低下症の症状が現れます。このほか副腎皮質刺激ホルモンの分泌低下では、全身倦怠感、疲れやすい、消化器症状(嘔吐・吐き気、下痢 等)、低血圧などが見受けられます。
治療をする場合ですが、分泌が不足しているホルモンを補充していくようにします。原因疾患が判明している場合は、それに対する治療(薬物療法、手術療法、放射線治療 等)を行っていきます。
中枢性尿崩症
脳下垂体後葉より分泌される抗利尿ホルモン(パソプレシン)の分泌に障害がみられることで、尿を濃縮する機能が低下している状態が中枢性尿崩症です。
主な症状は多尿です。それによって口渇中枢が刺激を受け、口の渇きを感じるなどして多飲するようになります。多尿とは1日3ℓ以上のことを言いますが、大半は1日5~10ℓになると言われています。ちなみに尿比重が1.010以下の低張尿であると確認されると尿崩症が疑われます。
発症の原因ですが、特定できない特発性のケースもあります。それ以外では遺伝的要因(遺伝子変異)のほか、何らかの病気(脳腫瘍、下垂体炎、肉芽腫性疾患 等)を発症している、頭部の外傷などが挙げられます。
治療に関してですが、抗利尿ホルモンが体内で不足している場合に効果があるとされる酢酸デスモプレシンの点鼻薬や経口薬を使用していきます。また原因疾患が特定している場合は、それに対する治療となります。
末端肥大症
先端巨大症とも呼ばれますが、成人になって成長が止まった後も成長ホルモンの分泌が過剰となっている状態を言います。この場合、下垂体に良性腫瘍である下垂体腺腫が発生していることが多いです。なお発育期で発生すると高身長になります(下垂体巨人症)。
下垂体前葉に腫瘍が発生し、これによる圧迫症状がみられるようになると、視力低下・視野障害、頭痛などがみられます。成長ホルモンの過剰分泌としては、手足が大きくなる、顔つきの変化(下あごの突出、額・舌・鼻・唇が大きくなる 等)、胸郭の拡大、汗を掻きやすい、歯のかみ合わせが悪くなるなどが挙げられます。
治療に関しては、下垂体線種を取り除く(摘出する)ための手術療法が基本となります。なお腫瘍が大きくて摘出が困難、血液中に含まれる成長ホルモンの過剰分泌が異常という場合は、同ホルモンの分泌を抑制する薬物療法(プロモクリプチン 等)や放射線療法が行われます。
クッシング病
副腎から分泌されるホルモンのコルチゾールが過剰に分泌されている状態をクッシング症候群と言います。その中でも下垂体腺腫の発生によって異常(分泌過剰)を引き起こしている場合はクッシング病と診断されます。
クッシング症候群による主な症状ですが、脂肪がつきやすくなるので、満月様顔貌、中心性肥満、野牛肩になりやすいです。このほか、皮膚が薄い、赤色皮膚線条、高血圧、筋力低下、むくみなどもみられます。またアンドロゲンの分泌も過剰であれば、にきび、多毛、月経異常(女性の場合)などの症状も現れます。
治療につきましては、手術療法(経蝶形骨洞手術)による腫瘍の摘出となります。手術では効果が不十分、困難という場合は放射線療法となります。なお放射線治療の場合は、併用して薬物療法(コルチゾール分泌抑制療法 等)も行っていきます。上記で効果が乏しく、血液中に含まれるコルチゾール値を下げる必要があると判断されると副腎摘出術になります。
プロラクチノーマ
下垂体前葉に発生する良性腫瘍が下垂体腺腫です。この下垂体腺腫からプロラクチンと呼ばれるホルモンが産生され、それが(下垂体腺腫より)多量に分泌されている状態がプロラクチノーマです。なお下垂体腺腫は、機能性と非機能性に分けられます。先にも述べたように(プロラクチノーマは)腺腫の細胞からホルモンを産生し、分泌するので機能性下垂体腺腫となります。
主な症状ですが、女性の場合は乳汁漏出、無月経、不妊の症状が現れます。また男性では性欲低下やEDがみられます。女性の方が気づきやすいとされる病気で、男性は発見が遅れることが多いです。
治療に関しては、薬物療法が基本となります。具体的にはプロラクチンの過剰分泌を抑えるとされるカベルゴリン、ブロモクリプチン等が用いられます。なお、薬物療法では効果が乏しい、腺腫が巨大化している場合は手術療法(経蝶形骨洞手術)となります。
副甲状腺疾患(原発性副甲状腺機能亢進症)
副甲状腺は、甲状腺の裏側の上下左右にひとつずつ(計4個)存在する小さな臓器になります。副甲状腺からは副甲状腺ホルモンが分泌されます。これによって、血液中に含まれるカルシウムの濃度を上昇させるほか、腎臓内でビタミンDの活性化を促進させる働きもあります。これが小腸など消化管でのカルシウム吸収を助けるなどしていきます。この副甲状腺で起きた病気のことを副甲状腺疾患と言います。種類としては、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌する副甲状腺機能亢進症や同ホルモンが作用不足を引き起こすことで発症する副甲状腺機能低下症があります。
原発性副甲状腺機能亢進症
副甲状腺そのものに何らかの病気(副甲状腺腺腫、過形成、副甲状腺がん)等がみられ、それによって副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている状態を原発性副甲状腺機能亢進症と言います。なお副甲状腺機能亢進症には、副甲状腺以外の病気(腎疾患 等)が原因となって同ホルモンが過剰に分泌される続発性副甲状腺機能亢進症もあります。
同疾患では、主に高カルシウム血症でみられる症状がみられるようになります。具体的には、喉が渇く、吐き気・嘔吐、食欲不振、倦怠感、多飲・多尿、夜間頻尿、易疲労性、イライラする、筋力低下などです。なお患者様によっては症状が現れにくいということがあります。ただ放置を続けると、骨粗しょう症、尿路結石、腎障害などの病気を併発することも少なくないです。
治療をする場合ですが、基本は手術療法となります。主に腫大化した副甲状腺の摘出となります。原因(腺腫、過形成、がん)によって、手術方法は異なります。
副腎疾患
副腎は、体の左右にある2つの腎臓の上に存在する小さな内分泌腺です。副腎皮質ホルモン(アルデストロン、コルチゾール、アンドロゲン)と副腎髄質ホルモン(アドレナリン、ノンアドレナリン)を産生し、分泌しています。これらホルモンの分泌が何らかの原因によって、過剰になる、もしくは不足するなどして起きる様々な症状のことを総称して副腎疾患と言います。主な副腎疾患は次の通りです。
原発性アルドステロン症
主に副腎に腫瘍(腺腫)や過形成などが発生することで起きるとされ、それに伴ってアルデステロンと呼ばれるホルモンが過剰に分泌されている状態が原発性アルドステロン症です。この場合、体内にナトリウムが蓄積されていき、その影響で高血圧の症状がみられるようになります。ちなみに同疾患に罹患されている方は二次性高血圧の患者様でもあるのですが、日本人の全高血圧患者様の1割程度を占めるのではないかとも言われています。
主な症状ですが、先に挙げた高血圧のほか、低カリウム血症にもなりやすいです。この場合、筋力低下、手足の麻痺、脱力発作、多飲・多尿などがみられます。
治療に関してですが、どちらか片方の副腎にのみアルデストロンが過剰に分泌されているという場合は、異常(病変)のある副腎を摘出する手術療法(腹腔鏡下手術)が選択されることもあります。ただ手術が困難、両方の副腎ともに分泌過剰となっている場合は、薬物療法となります。この場合、アルデストロン拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)やカルシウム拮抗薬などを用います。
クッシング症候群とは
副腎に良性の腺腫やがんの腫瘍等が発生することで、コルチゾールの分泌が過剰になっている状態を総称してクッシング症候群と言います。このコルチゾールは心身でストレスを受けることで分泌が増えることからストレスホルモンと呼ばれています。
これが上記の原因で過剰となれば、顔面や体幹、肩甲骨周囲に脂肪がつきやすくなって、満月様顔貌、中心性肥満、野牛肩がみられるようになります。また高血圧、むくみ、手足等の筋力低下、皮膚が薄くなってしまうことなどによる赤色皮膚線条のほか、糖尿病、骨粗しょう症、尿路結石などが現れることもあります。
治療に関してですが、副腎腺腫やがんが原因であれば手術療法として、腫瘍の摘出術が行われます。過形成であれば、両側の副腎を摘出後にホルモン補充療法となります。
褐色細胞種
主に副腎髄質などに発生する腫瘍になります(人によっては多発することもあります)。この腫瘍は、カテコールアミンと呼ばれるホルモン(ドーパミン・ノルアドレナリン・アドレナリン)を過剰に産生していきます。それによって、高血圧の症状が現れるのをはじめ、代謝亢進による頻脈、便秘、体重減少のほか、血糖値上昇、多汗などもみられます。なお発症原因については、3~4割程度が遺伝的に発生する腫瘍と言われています。ちなみに褐色細胞種の約9割は良性です。
治療に関しては、まずは血圧を下げるための薬物療法として降圧剤(α遮断薬)を使用します。血圧がコントロールできるようになってから手術療法となります。内容は腫瘍の切除です。この場合、腹腔鏡下での腫瘍切除となります。ただし、腫瘍があまりにも大きい、周囲に広がりすぎているのであれば、開腹しての手術となります。また悪性と診断され、別の臓器に転移がみられている場合は、抗がん剤による治療を行います。
アジソン病
副腎より分泌されるホルモン(副腎皮質ホルモン)が慢性的に不足し、それによって様々な症状がみられている状態を副腎皮質機能低下症と言います。この場合、副腎そのものが原因で発症する原発性副腎皮質機能低下症、副腎以外の部位(視床下部、下垂体)の病気や障害によって同ホルモンが不足する続発性副腎皮質機能低下症、長期のステロイド薬の投与が原因の医原性副腎皮質機能低下症に分類されます。
アジソン病は、原発性副腎皮質機能低下症のうち後天性によって起きるタイプになります。具体的には、自己免疫疾患、結核などの感染症、肺がんやリンパ腫の転移、外傷や手術、放射線治療等の副腎障害などが原因となって起きるとされています。
主な症状ですが、副腎皮質ホルモンは大きく3つのホルモン(コルチゾール、アルドステロン、アンドロゲン)に分類されます。これらが不足することで、体重減少、低血圧、低血糖、全身の倦怠感、精神症状(不安症状、うつ 等)、食欲不振、便秘、下痢などがみられるようになります。
同疾患の治療については、不足している副腎皮質ホルモンの補充となります。主にヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン等を投与していきます。